おすすめの一冊(広報かみしほろNo668
令和5年11月25日(土) | ![]() | 3610 |
概要

小野寺 史宜/著
秋が駆け足で去っていき、外に出る事が億劫になる厳しい冬の到来ですね。そんな夜長にゆっくりと読んでほしい本を紹介します。
主人公は二十歳の秋に母が亡くなり、天涯孤独の身となった柏木聖(せい)輔(すけ)。
母が無理をしてまで進ませてくれた東京の大学を中退し、これからの生活に焦りと不安を感じながら、ふらふらと砂町銀座の商店街を歩いていると、揚げ物の香りに誘われて、一軒の惣菜 店に辿り着きます。今日一日の食費、残り55円を財布に入れて。
そこで出会う店主家族や従業員たちの聖輔に対するさりげない愛情、大学時代の元バンド仲間等の交流が聖輔の運命を変えていきます。
二十歳になって間もない時期に、突然一人で社会に放り出される孤独感、安らぎを感じられる相手に出会えた幸福感、淡々と進んでいく物語に読む側の感情が大きく揺さぶられます。
物静かで優しい性格ゆえ、助けてくれるひと、守ってくれるひとがいる一方で、利用しようとするひと、たかるひとがいる。善悪を客観的に受け止め乗り越えていく姿に深く考えさせられる一冊です。
おすすめの一冊
広報かみしほろの「としょかんだより」で毎月1冊紹介している書評コーナーです。
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